仕事場で単行本にサインをしていると、ポカQが
横にやって来て、「いい線だ。勢いがある。まだまだ
描ける」と、巨匠のような尊大な物言いで、評価を
してくれる。
ポカQは、某漫画家はもう死んだとか、某漫画家は
もう現役で描いてないとか、某漫画家はまた描こうと
しているが絵が死んだとか、某漫画家は貧乏のどん底
に落ちているとか、某漫画家は病床の身で間もなく
死ぬとか、そんな悲惨な情報を次々繰りだしてくる。
わしは「え――――本当?」「うそ――――、あの
漫画家が――――?」とか、いちいち驚きながら、
3時間もサインを描いていたのだが、それらの消えた
漫画家の年齢がわしと大して違わなかったり、
わしより若かったり、ほんの少し上の漫画家ばかり
なのだ。
ポカQは「そんな中で社長は現役感がバリバリなの
だから凄い」とか、おべっかを言って、わしを元気
づけていた。
わしも消えた漫画家の方に入っていてもおかしくない
年齢なのだが、不思議なことに漫画を描くという情熱と
気力において、まったく「老い」を感じない。
『おぼっちゃまくん』を描いていても、新たな実験を
やっていこうと野望で胸が高鳴るくらいで、『ゴー宣』
も『よしりん辻説法』も、どうしても人が読まざるを
得ない作品にしてやるという自信が湧きおこってくる
のだ。
老いはどこからやってくるのだろう?
自分の胸に問いかけた。
ニセモノなんか興味はないんだ。
ホントだけを見つめたい。
どこかで聞いたような言葉だな?
これ、歌じゃないか?